小説好きが選ぶ!京極夏彦のおすすめ小説10選

小説好きが選ぶ!京極夏彦のおすすめ小説10選

「読む隕石」と比喩される京極夏彦の作品たち。一度手に取ってみると抜け出せなくなるような、独特の世界観と魅力にあふれています。

名前は聞いたことがあるけれど、どの作品を読んだらいいのかわからないという人のために、京極夏彦大ファンの筆者がおすすめをご紹介していきます。是非参考にして見て下さいね。

京極夏彦とはどんな作家?作品の魅力は?

日本推理作家協会代表理事、 世界妖怪協会・世界妖怪会議評議員、関東水木会会員、東アジア恠異学会会員。

一体何?と思った方も多いかもしれませんが、これらは全て京極夏彦のもつ肩書です。これからわかるように、京極氏は無類の「妖怪馬鹿」(と自称されています)。そのくらい妖怪が好きな京極氏の作品は妖怪にまつわるものが多いですが、ミステリーから怪談と幅広く手掛けています。圧倒的な知識量と構成力、そしてその表現力は日本中から愛されています。

【1】魍魎の匣

百鬼夜行シリーズの最高傑作とも言われる魍魎の匣。1000ページを超える見た目のインパクトも抜群のミステリー小説です。ミステリー×妖怪という新しいコンセプトで送られる妖怪エンターテイメントの最高峰。

駅のホームから転落し、電車にひかれてしまった美少女。町で起こる連続バラバラ殺人事件。この2つの事件につながりはあるのでしょうか。そして病院から少女が忽然と消えた…物語はどう集結していくのでしょうか。読みごたえ抜群の作品となっています。京極氏の圧倒的な筆力が存分に発揮されており、すらすらと読むことが出来る作品です。

京極氏の作品をドカンと重量級に楽しみたい人にお勧めです。

【2】百鬼徒然袋 雨

八歩ふさがりな難事件も怪現象もおかしな犯人も皆まとめて粉砕してしまう神であり探偵である榎木津礼二郎を主人公とした中編小説。榎木津は「百鬼夜行シリーズ」の登場キャラクターです。榎木津以外にも同シリーズからキャラクターが登場します。本編ではわき役として登場していた榎木津礼二郎のハチャメチャな事件解決を楽しむことが出来ます。もちろん、事件を妖怪になぞらえているので妖怪の要素もあります。「鳴釜」「瓶長」「山颪」の短編3篇を収録しているので短い作品を楽しみたい人におすすめです。

【3】嗤う伊右衛門

ミステリー作家であり妖怪馬鹿である京極氏が新たに再構築した「四谷怪談」。鶴屋南北の最高傑作といわれる「東海道四谷怪談」とはがらりと雰囲気を変え、登場人物はそのままに京極氏の著作「巷説百物語」の主人公を交えてその怪談を悲恋な物語へと昇華しています。

怪談の再構築という新たな作風を生み出し、その怪談の良さを生かしつつ独自の解釈も交えているという度肝を抜かれる作品です。誰もが知る「お岩さん」の物語を古典的な表現過ぎず現代にも適応する形で描いている怪作ともいえるでしょう。

ホラー系を読んでみたい!という人にお勧めです。

【4】どすこい(仮)

まさかのギャグ!エッヂのきいた京極節な笑いが連鎖する珍しい1冊。相撲取りの討ち入りを描く「四十七人の力士」や「パラサイト・デブ」といった短編が収録されています。超まじめな文体とは裏腹にくだらない内容を描いているギャップもまた面白いです。他の京極作品を読んでいなくても笑え、様々なパロディが散りばめられているのでそれらを拾いながら読むのも楽しいでしょう。京極氏に書けないものはないのか、と驚かされる作品でもあります。ミステリーやホラーなどはちょっとハードルが高い…という人は是非「どすこい」で京極夏彦カラーの笑いを味わってみて下さい。

【5】厭な小説

「厭で厭で厭でたまらなくって、それでみんな逃げだしたんだ。社会から、人生から、日常から、人間から――」

本当に厭になる小説。社会の不条理や理不尽や不可解なことを煮詰めて小説にしたような感じです。安全な殺人を起こすことになったホームレスの男。自分が厭なことだけをする異常な彼女。「厭なもの」を描いた短編7編を収録した作品となっています。俗にいう「理不尽系ホラー」なので何処かモヤモヤした気持ちが読後には残ります。様々なことを考えさせられるという点ではかなり優秀な作品なのでしょう。京極氏の表現のうまさも相まって厭なものが生々しく描かれています。しかし、厭なものは厭なのです。

【6】幽談

「」談シリーズという作品の中の第1冊。どこか現実離れした幽、な怖さが滲む短編ホラー小説となっています。洗礼された世界観の中にある仄暗い怖さが滲み、しかし美しい描写と文体によってその怖さが幽かなもやとなって読後にまで残ります。ゾッとしてしまう怖さというよりも、美しくため息の出るような怖い小説です。

「こわいもの」「十万年」「逃げよう」などの8編を収録しており、1話ごとがかなり短いので小説初心者の方でも読みやすくなっています。

【7】書楼弔堂 破暁

舞台は明治時代。東京の外れに佇む異様な外観の本屋「書楼弔堂」。そこは本と人との出会いを紡いでいく場所でした。移り行く時代の中で本と人とのつながりについて描いていくシリーズとなっています。

6編の短編集からなっており、百鬼夜行シリーズとはまた一味違った雰囲気があります。本屋の名前が百鬼夜行シリーズ登場人物の祖先にあたるものであったりとファンには嬉しいギミックが散らばっています。書店に訪れる有名人の名前に驚きながらも、ゆっくりとした世界観に没入出来る作品です。ミステリー以外のシリーズ物が読みたい人はこちらをおすすめしておきます。

【8】死ねばいいのに

衝撃的なタイトル。普通とは何か、幸せとは何か。簡単なようで難しいテーマを考えさせられる作品です。

数か月前殺された女のことを、主人公に聞きに来た男。何故男は主人公にそれを聞くのか。交わらない会話の中から探り出される彼女の像。舞台が現代だからこそ考えさせられることが多いです。人間の仄暗い部分を的確に描いている作品です。

京極作品にしては言い回しなどが難しくなく、非常に読みやすいためミステリーが苦手な人にもおすすめしたい1冊です。

【9】妖怪の理 妖怪の檻

妖怪とは一体何か。妖怪馬鹿こと京極氏による妖怪についての妖怪に対する考察を交えた文芸書。知っているようで知らない妖怪という存在について、京極氏自らが考察し、その実体について解説しています。妖怪についての知識を深めるだけでなく、京極作品を楽しむためにも読んでおいて損はないでしょう。妖怪についてかなり学術的に解説していますが、読みやすさは抜群です。妖怪好きには是非お勧めしたい1冊です。

【10】うぶめ

京極夏彦による妖怪えほん。絵本も書いています、京極氏。

京極夏彦作、井上洋介画というタッグでお送りする子供向けの作品ですが、大人でも楽しめるクオリティの絵本となっています。子供を産めなかった母は悲しみや口惜しさから妖怪となる…「姑獲鳥」という妖怪の成り立ちを描きつつ、現代に落とし込んだ作品となっています。切なさと怖さがにじみ、子供によっては怖いと感じるかもしれません。

一味違った京極作品を楽しみたい方におすすめです。

圧倒的な世界観を楽しもう!

京極氏が手がける様々なジャンルの作品を紹介してきました。気になるものはあったでしょうか。京極氏の小説はボリュームのあるものが多いですが、一度読み始めたら止まりません。個性豊かな登場人物はもちろん、そのストーリーの面白さも筆舌し尽くしがたいものがあります。是非その目で圧倒的な世界観を目撃して見て下さい。