小説好きがすすめる!サクッと読めるおすすめ短篇小説15選

小説好きがすすめる!サクッと読めるおすすめ短篇小説15選

ここでは、サクっと読める「短編小説」のご紹介をしていきます。

短編小説の醍醐味は何といっても短い中で良くまとめられているストーリーにあります。文章が苦手な人でも読みやすく、簡単に小説の世界を楽しむことが出来るでしょう。SFやホラー、純文学まで、様々なジャンルを揃えてみました。是非お気に入りの一冊を見つけてみて下さい。

お手軽に文学作品を楽しみたいなら短編がおすすめ! 

短編小説はやはりその短さが魅力です。隙間時間や移動中に読んでも完結するほど短いので、長編小説を分割で読むときに起こる「前の内容忘れちゃった…」ということもありません!一冊でたくさんのストーリーを楽しむことも出来るので、お得感もあります。長編小説を読み切るのが難しいと思う人は短編小説にチャレンジしてみましょう!

短編小説には、個々の話をまとめたタイプのものと、何らかのつながりがある話をまとめたタイプの2種類になっています。それぞれに良さがありますので、自分に合ったものを見つけましょう。

今回は、短編小説よりも短い「ショートショート」と呼ばれるものも短編小説としてご紹介していますので、是非参考にして見て下さいね。

星新一「ボッコちゃん」

スマートかつユニークなショートショートを生み出すことで有名な星新一。SF短編小説で星新一の右に出るものなし、といわれているほど。

「ボッコちゃん」「おーい でてこーい」「殺し屋ですのよ」「月の光」「暑さ」「不眠症」「ねらわれた星」「冬の蝶」「鏡」「親善キッス」「マネー・エイジ」「ゆきとどいた生活」「よごれている本」など全50篇を収録したこの短編集は読みやすさ抜群!新しい発見と驚きをもたらしてくれます。ちょっぴりダークな一面もある短編集です。一つ一つは短いですが、どの話も濃密なので1冊小説を読み終わったかのような充実感が得られます。

梶井基次郎「檸檬」

繊細な感受性で緻密な表現に定評のある梶井基次郎の短編集です。表題作の「檸檬」をはじめ「城のある町にて」「雪後」「闇の絵巻」などを含めた12編を収録した1冊です。

梶井基次郎の花火のようなきらめきのある表現を味わいながらじっくりと読み返して欲しい短編集となっています。1925年に書かれた作品で、時代が違えど人間の感性というものは変わらないのだと思わされます。表題作の「檸檬」では特に細やかな情景描写と主人公の感じる焦燥感がリアルで共感してしまいます。この短編集は全てバラバラの内容を1冊にしているタイプの短編小説となっています。

夏目漱石「夢十夜」

1908年に朝日新聞に掲載された作品をまとめたものが1冊になっています。題名の通り、夢について書いた短編集です。明治・神代・鎌倉・100年後といった時代をまたぐ夢を10個綴っています。第一夜、第二夜…というように続いていき、書き出しは「こんな夢を見た」というものから始まるのがお決まりです。夏目漱石にしては珍しい幻想文学のような描写が特徴的で、夢の中ということもあってか不思議なストーリーのものが多くなっています。僅かに怖さもにじみつつ、情景描写の美しさに引き込まれていくこと間違いなしです。幻想的で夢見心地になれる短編集をお求めの人におすすめです。

芥川龍之介「羅生門」

近代文学の天才・芥川龍之介による短編集・「羅生門」。羅生門の上で巻き起こる人間模様を描いた「羅生門」や自分だけ助かろうとした男のエゴイズムの先を描く「蜘蛛の糸」、「杜子春」などを収録した1冊。緩急のついた表現と情景・心理描写の巧みさに思わずため息が出るほどです。国語の教科書にも使われていた作品が収録されているのでなじみ深いものとなっています。大人になった今だからこそ読みたい作品です。いまなお人々を魅了してやまない芥川龍之介の珠玉の短編集となっています。一気に読むも、隙間時間に1話ずつ読むのも良いでしょう。

京極夏彦「虚談」

2021年に文庫版が出版された「虚談」。ホラーミステリー界の帝王・京極夏彦によるホラーテイストな短編集となっています。

「この世界は全て虚構だ」どれが現実でどれが虚構なのか。その境界線が曖昧になり、噎せ返りそうになる不思議な話の数々。「自分と他人の境界」「現実と虚構の境界」が一体どこにあるのか、わからなくなってくる恐怖が読者にまとわりつきます。怪談の風味もありますので、ホラーテイストの短編を読みたい人には良いでしょう。京極夏彦の作品の中では比較的読みやすい文体となっており、情景を思い浮かべながら読み進めることをおすすめします。独特の浮遊感が残る読後感もたまりません。

恩田陸「象と耳鳴り」

2003年発売の、ミステリー短編集「象と耳鳴り」。恩田陸による繊細かつ大胆なロジックが光る短編集となっています。

元判事の主人公を中心として巻き起こる事件や日常の数々。「象と耳鳴り」をはじめとして「曜変天目の夜」や「給水塔」といった短編が全12編収録された1冊となっています。

難しすぎないトリックや美しい文体のため、ミステリー初心者の方でも楽しめる作品となっています。心理描写の巧みさから、純文学のような印象も受ける短編です。1話ごとにストンとオチどころがしっかりしているので短い時間の中でミステリーを楽しみたいという人におすすめです。

江戸川乱歩「江戸川乱歩傑作選」

日本の探偵小説文化を確立し、恐怖小説というジャンルも確立した鬼才・江戸川乱歩の傑作をまとめた贅沢な1冊。処女作「二銭銅貨」をはじめとし、「芋虫」「二癈人」「D坂の殺人事件」「心理試験」「赤い部屋」「屋根裏の散歩者」「人間椅子」「鏡地獄」といった初期の作品9編をまとめています。何度読んでも色あせない名作を味わうとともに人間の底知れない気持ちの悪さも感じられる作品となっています。

倒錯的なフェティシズムとグロテスクさの混じった表現が特徴的です。乱歩の世界観に浸るのにお手軽な短編です。江戸川乱歩作品が気になっている人にもおすすめです。

小野不由美「鬼談百景」

ホラー作家・小野不由美が初めて手がけた百物語の形をとった短編集。放課後の教室に伸びる黒い影、どこからともなく聞こえる鼻歌、かくれんぼをしているときに出会った少年…誰もが幼少期に体験したことがあるどことない恐怖感を味わうことのできる1冊。フィクションなのかノンフィクションなのか、その実体すらも曖昧で恐ろしくなっています。身近に迫る恐怖から、ノスタルジックな恐怖まで描いています。緻密な描写がより一層恐怖を煽ってきます。全99編収録。百物語の最後、100話目は同著者の「残穢」となっていますので、そちらと合わせて楽しむのも良いでしょう。

長野まゆみ「鉱石倶楽部」

美しい鉱石から生まれたファンタジックな物語をまとめている1冊。

放課後の理科室で不思議な図鑑を見つけた少年は、夜な夜な夜間教室に参加していきます。美しい鉱石写真とともに楽しむ「鉱石図鑑」のようなこの短編集は、眺めているだけでも幸せな気持ちになれます。紫水晶、白雲母、月長石など数々の鉱石から物語は生まれていき、きらきらと輝くような感情にしてくれます。鉱石ごとにつけられた美味しそうなタイトルと鉱石の調理の仕方、など幻想的なユーモアも交えてページを彩っています。夜眠る前にページを開きたい短編集となっています。

嶽本野ばら「カフェー小品集」

「ミシン」や「下妻物語」などで有名な嶽本野ばらの初の短編小説です。自身のこだわりと誇りを持つ「僕」と「君」がすれ違っていく様子を描いた恋愛模様。京都・東京・鎌倉といった年に実際に店を構える、著者の愛したカフェーを舞台に物語は進んで行きます。ちょっぴり切なく、郷愁的な雰囲気が漂う美しい恋の物語の数々を味わうことが出来ます。短編・掌編12本を収録しており、カフェーへ足を運ぶお供にしたい1冊です。嶽本野ばら独自の美意識やこだわりが垣間見えるエッセイ風の作品となっています。この短編集を読むなら是非純喫茶で!プラトニックでノスタルジックな気分になりたい人へおすすめです。

瀬尾まいこ「卵の緒」

僕は捨て子だ。その証拠にお母さんはへその緒を見せてくれない――衝撃的な1文から始まる、家族の愛について描いた短編小説。瀬尾まいこ独特の優しくて切ない文体と作品全体を包むほろ苦さが残る作品となっています。表題作の「卵の緒」と、血のつながりのない異母兄弟の心のふれあいを描いていく「7’s blood」の2編を収録しています。どちらの話も繋がりとは色々な形があり、幸せの形も人それぞれなのだと言う事を気づかせてくれます。柔らかい文体と、優しい情景が目に浮かぶようです。家族とは何か、大切なものを忘れてしまったような気がする人には読んで欲しい1冊です。

連城三紀彦「美女」

女という役者、男という役者が恋愛という舞台の上で演じ続けるさまを描いたミステリアス・ノベルスの短編集。男女の虚実の曖昧さを生々しく表現できるほどの文章力と洞察力に驚かされる作品です。表題作「美女」をはじめとし、「夜光の唇」「喜劇女優」「夜の肌」など8つのミステリーを収めています。13年にわたる夫婦の静かな戦いや「また浮気ですか?」という妻の言葉…緻密に練られた構成で組み立てられた物語は傑作といっても過言ではありません!登場人物は皆美男美女揃い。その裏に隠された恐ろしい姿を見てみたい人にはおすすめです。リアルな描写と情景の美しさが特徴的です。

森茉莉「薔薇くい姫」

森鷗外の娘・森茉莉による美しい文章を味わいたいならこちらの短編集がおすすめです。自分自身のことしか興味を持てない主人公の心情を描いた「薔薇くい姫」、禁断の男性同士の恋愛模様を官能的な美しさに昇華させた「枯葉の寝床」「日曜日には僕は行かない」の3篇が収録されています。作風が特徴的なため、読み始めは違和感があるかもしれませんが、文章と呼吸があってくるとスルスル文章の中に入っていける不思議な魅力があります。「薔薇くい姫」と他2篇の雰囲気が少し違うのでそういった違いも楽しみながら読み進めていきましょう。耽美な世界観に酔いしれたい人におすすめです。

ジャンニ・ロダーリ「パパの電話を待ちながら」

イタリアを代表する児童文学作家、ロダーリの優しくポップな世界観で綴られる童話風短編集。「イタリアの宮沢賢治」といわれる彼の、不思議で魅力的なお話が収録されています。

世界中を旅するセールスマンの父親が毎晩9時に娘に電話をかけ、短いお話を聞かせてあげる、という形に沿って短編が連なっていきます。切なさの残る話から不思議でロマンティックな話までよりどりみどり。個性的なキャラクターのお話が多く、童心に返ることが出来るでしょう。読者もパパからお話を聞かせて貰っているような気持ちになります。寝る前に1話、読んでみるのがおすすめです。

小説トリッパー編集部「20の短編小説」

オムニバス形式で20人の小説家が「20」をテーマに執筆した短編集。作家によって全く作風が違い、1篇ずつも短くなっているのでワクワクしながら読み進めていくことが出来ます。作家陣も朝井リョウ、伊坂幸太郎、恩田陸、江國香織、羽田圭介、森見登美彦など錚々たる顔ぶれ。20篇ある作品ですが、どれも作家の個性が出ていて読んでいて楽しいものとなっています。「読み比べ」をしながら楽しめる作品はなかなかありません!小説という表現が秘めた可能性を感じられる1冊となっています。お気に入りの作家さんがいなくても、新しい作家との出会いにもなるかもしれません。

気軽に楽しめる短編小説を手に取ってみよう

多ジャンルにわたる15作品を紹介してきました。有名作家を集めた一冊だったり、場所ごとに分かれている一冊だったりと意外なものも多かったかもしれません。

長編小説に疲れてしまった人や一気に読み切りたいという人は、気軽に読める短編小説を手に取ってみましょう!

気になっているけれど文体が合うかわからない作家さんの作品など、お試し感覚で短編を読んでみるのも良いかもしれません。色々な楽しみ方があるので、自分に合ったスタイルで短編小説を楽しんでみて下さい!