昨今、たくさんのホラー作品が世の中には出回っています。一口にホラーと言っても「スプラッタ系」なのか「サスペンス系」なのか、はたまた「ヒトコワ」なのか「幽霊系」なのか色々なジャンルがあります。ホラーを見てみたいけど、何を見たらいいかわからない…なんて人もいるのではないでしょうか。
洋画と邦画でもかなりつくりや演出が異なり、それぞれ違った怖さを見せてくれます。
ジャパニーズホラーの特徴はなんといっても独特の「じめじめした薄気味悪さ」「尾を引く怖さ」でしょう。洋画にはなかなかないジャパニーズホラーの良さが詰め込まれた作品を厳選しました。金字塔ともいえる作品から最新のものまで含めたおすすめホラー映画を10選ご紹介していきます。
目次
【1】着信アリ
- 現代テクノロジーをホラーにした斬新さ
- 着信音の怖さ
- 呪いの連鎖
「悪の教典」などでお馴染みの三池崇史監督のジャパニーズホラー。2004年公開のため、設定が少し古いが現代でも通じる怖さがあります。
ある日突然友人の携帯電話に入っていた留守番電話。それは友人の悲鳴が録音されています。着信時刻は3日後になっており、3日後その日名と同じ声を上げて友人は亡くなってしまいます。死の予告電話が掛かってくるとその内容通りに死んでしまうという内容になっています。当時の最新だった「携帯電話」がきっかけとなり巻き起こっていく呪いは妙にリアリティがあり、いつ自分の番が来るかわからない、という恐怖に陥れられます。
着信アリではその印象的な着信音も恐怖演出として良い味を出しています。ガラケー特有の電子音が耳に残って離れなくなること間違いなし!
この映画もまた、死んだ人の携帯電話から電話をかけることによって呪いが連鎖していくという要素があります。
【2】リング
- ホラーの概念を覆した「貞子」
- 記憶に刻み付けられる「呪いのビデオ」
- 抗えない「呪い」
ジャパニーズホラーと言えばもうこれ!ホラー界の金字塔!誰もが一度は聞いたことがある「貞子」!という、とにかく原点にして頂点の作品。
見たら1週間以内に呪い殺されるという「呪いのビデオテープ」の謎を追い求めていく女性を主人公としたホラー映画です。
しかしテーマがVHSを媒介して感染していく呪いなので、若い世代は「VHSってなに?」から入ってしまうのが哀しいところです。
リングと言えば貞子。今や始球式に出たり呪怨の幽霊たちと戦わされたりして怖さというよりもそのキャラクター性に親しみが出始めてしまっていますが、それでも映画「リング」に出てくる貞子は当時絶大な恐怖を人々に植え付けました。今見てもその怖さは健在です。有名なテレビから這い出てくる演出、貞子のシンプルかつ恐ろしい様相は本能的に恐怖を感じます。
リングで特に印象的なのが「呪いのビデオ」の内容です。断片的に意味の分からない映像が差し込まれたその呪いのビデオは一度見たら忘れられなくなってしまう作りになっています。貞子は怖くないという人でも呪いのビデオの内容は怖くて見たくないという人もいるくらいです。
そして、主人公が呪いの根源を探し、追い求めて呪いが連鎖していく様子は、ジワリとした恐怖を齎してくれます。我々の身近なところにも貞子の呪いのビデオがあるかもしれない、友人に見せられてしまうかもしれない、そんな怖さを孕んだ作品です。
【3】仄暗い水の底から
- 親子愛を描いた切ないストーリー
- 心理的に厭な演出
- 印象的な団地の閉塞感
ずっとずっと いっしょだよね、ママ。「リング」とおなじく、原作:鈴木光司と監督:中田秀夫のタッグが送る切ないホラー映画。
離婚・親権問題を抱えた母親の苦悩に加え、母娘が住むマンションで続発する怪奇現象が巻き起こっていく脚本は、恐怖と息苦しさが共存しています。
この作品は他のホラーとは一味違い、恐怖と同時に切なさも感じられる作品です。娘を思う母の行動がクローズアップされていることもあり、視聴者は主人公の母親に感情移入しながら見ることが出来ます。
タイトルの通り、始終、水にまつわる演出があり、ジャパニーズホラー特有のじめじめした雰囲気が存分に盛り込まれています。特に雨の演出は印象的で、雨の日に何かが起こったり、何かが見えたりするので、視聴後雨の日は少し緊張してしまうのではないでしょうか。
視界の端に映る何かの影や、エレベーターの窓に一瞬だけ映る何か…そんな日常を蝕む映像のせいで無意識的に自分にも何か起こってしまうのではないかと思ってしまいます。
また、団地で巻き起こる怪異の数々は、団地特有の閉塞感がより一層恐怖を掻き立てます。古いエレベーターや廊下の陰など、マンションにはない空気感に魅了されます。
怖いだけじゃない感情になりたい人におすすめです。
【4】呪怨
- 足を踏み入れたら最後の呪いの家の不気味さ
- 日常に潜む逃げ場のない恐怖
- 悲劇的な背景
「富江」などを手掛けた清水崇監督が送る戦慄ジャパニーズホラー。「リング」と肩を並べ日本を代表するホラー映画です。お化けと言えば貞子か加耶子かと言われるほどキャラクターイメージが定着している呪怨ですが、映画で見るとその怖さは桁違いです。
呪われた家に足を踏み入れた者が、強い怨念によって呪われていくというストーリー。家に入っただけで呪われるという点で、リングとは一味違った呪いの広がり方をしていきます。
呪怨は、「家」という日常空間に入り込んでくる呪いや幽霊を描いており、ひっそりと「自分の家にも何かいるのではないか」という不安と恐怖を与えてくれます。トラウマになった人がたくさんいるであろう「布団」のシーンなどは逃げ場のない恐怖が襲ってきます。
そんな呪いの家に出てくる幽霊・加耶子には悲しい背景もあり、物語としても見ごたえがあります。
呪怨作品はかなりシリーズ数があるので、是非網羅して見て下さい。
【5】黒い家
- 人間の怖さ
- サイコパスというものの存在
- 得体の知れない人間の行動
1999年に公開された「黒い家」の映画は、心霊的な怖さではなく人間の怖さを描いた「ヒトコワ」映画です。幽霊に脅かされるもの以外を見たい人には黒い家をおすすめします。
保険会社の職員である主人公は保険金の説明に訪れた女性の家でその家族の息子の首吊り死体を発見してしまいます。そこから両親の異常な言動を目の当たりにし、恐怖に飲み込まれていく…といった内容です。
ぱっと見、怖い要素が無いように感じますが、この映画の醍醐味はなんと言っても「人間の異常性」にあります。人を傷つけることに抵抗が無い、目的の為なら手段を択ばず狡猾に行動していく人間のことをサイコパスと言います。「黒い家」はそんなサイコパスの異常性を鮮やかに描いた作品となっています。
サイコパス役を演じる大竹しのぶさんの演技力がとにかくすごい。引き込まれる演技と同時に怖さがこみ上げてきます。
序盤は淡々と進んで行く物語ですが、クライマックスにかけてはなかなかバイオレンスなシーンが盛り込まれているのでグロテスクな演出が苦手な人は注意して下さい。
【6】来る
- 前半部分と後半部分の差
- 中島哲也の描く「ホラー」
- エンターテイメント性
小説原作で映像化した「来る」は、「告白」や「嫌われ松子の一生」などを手がけた中島哲也氏が初めて挑戦するホラー映画ということで話題となった作品です。
主演に岡田准一、妻夫木聡、小松奈々、松たか子などを豪華なキャスト陣が顔をそろえています。前半部分は人間の厭な部分、人間の気持ちの悪い部分を色濃く描いており、ここで嫌悪感を抱く人も多いようです。人間の負の部分から怪異に繋がっていき、後半部分はエンターテインメント性に富んだ謎解き・怪異との対峙が描かれています。
この作品はホラー畑の監督ではない中島哲也氏がメガホンを握っていることもあり、良い意味でホラー過ぎない演出が見どころです。登場人物の人間性をクローズアップし、感情移入させる手腕は中島哲也氏ならではの魅力があります。
映画全体を通した色味、画面構成に至るまで「ホラーにより過ぎない」ところがとても新鮮な映画でした。
もちろんホラーとして見ても質は高く、始終「何かが襲ってくる」という恐怖にとらわれながら没入していくことが出来ます。何といっても見どころはラストスパート。
怖すぎずエンターテインメント性の高いホラーを見たい人は是非見てみて下さい。
【7】鬼談百景
- オムニバス形式
- 名腕監督たちによる演出
- 実話怪談の映像化
鬼談百景は、小説家・小野不由美による小説を原作とした映画になっています。同作家の「残穢」と併せて発売された小説は、実話怪談をまとめたものです。百物語のような形をとっており、99話あるうちの10話を映像化しています。余談ですが、100話目が「残穢」に当たるようになっています。
実話怪談をいくつもまとめたものを映像化すると言う事で、その特性を尊重した短編映画のオムニバス形式となっているのが映画「鬼談百景」です。
この映画は名監督たちによる短編映像がまとめられており、10分程度の時間で充分に怪談・ホラーを楽しめます。「貞子vs伽椰子」の監督・脚本を手掛けた白石晃士氏や「残穢」の中村義洋氏がメガホンを握っているため、映像の見ごたえも抜群です。
ジメジメとした日本のホラー特有の想像力に訴えかける演出、実話怪談ならではのオチがつかないリアリティさがより一層恐怖を煽ってくれます。
誰かが語った怖い話だと思うと、没入感が得られてもっと作品を楽しめるでしょう。
長いホラー作品を一本見るのはちょっと…という初心者の方におすすめしたい1作です。
【8】事故物件
- 実話をもとにしたストーリー
- 事故物件をいくつか渡り歩く
- 豪華な制作陣
「事故物件住みます芸人」として活動している松原タニシ氏の実体験をまとめた著書が原作の映画です。売れないお笑い芸人の主人公が、とある番組の企画をきっかけに事故物件に住むこととなり、そこから数々の怪奇現象に遭遇していく。数々の事故物件を転々と引っ越し続け、実際に住んでいた物件を間取り付きで紹介していくというストーリーになっています。主演の亀梨和也をはじめ、相方中井を瀬戸康史が演じるというキャスト陣に加え、監督は「リング」「仄暗い水の底から」などを手掛けたジャパニーズホラーの巨匠中田秀夫と、豪華な制作陣となっています。
実際に体験した怪奇現象を元にしているため非常にリアリティがあります。「どうしてここが事故物件になったのか」「なぜ怪奇現象が起きるのか」といった考察部分もあり、人が亡くなった事件の背景も語られています。
住居にまつわる怖い話が実話怪談に近い形で展開されていくホラーなので、リアルさを求める人におすすめしたい作品です。
【9】トリハダ
- ヒトコワ映画
- 谷村美月の演技力
- 一番怖いのは女の執念
2007年からドラマとして放送していた作品の劇場版。メインストーリーを主軸に短編で編成されているオムニバス形式をとっています。トリハダも所謂「ヒトコワ」系の映画です。トリハダには5か条というものが存在し、それは「幽霊は出ない」「超常現象は起きない」「音楽で恐怖を煽らない」「過度な演出はしない」「日常から逸脱しない」というものです。これに則り物語が展開していくことで日常に潜む恐怖が演出されています。
一見バラバラに見えるストーリーの行方とクライマックスへのつながりは圧巻です。
主演を務める谷村美月さんの演技力は素晴らしく、親近感のあるキャラクター性とリアルな演技で観客を引き込んでいきます。
トリハダ劇場版では、女性の執念深さが色濃く描かれており、「ヒトコワ」作品としてはかなり怖い部類に入るでしょう。
【10】残穢
- 1人で家に居られなくなる程の恐怖
- 誰にでも起こりうる怪異
- 見ても聞いても呪われる
今まで見た中で暫定1位!ホラー好きすら震えた映画を最後にご紹介いたします。
ホラー小説家の「私」に寄せられた一通の手紙から物語は始まり、その怪異の原因を探していくという内容。幽霊らしい幽霊は出てこないけれど、ジワリと広がっていく穢れに、視聴後も蝕まれる恐怖感がたまりません。大抵のホラー作品は明確に幽霊の形があるため、誰かと一緒に居れば怖さが和らぐことが多いですが、残穢はそれがなかなか難しいです。自分の傍にもいつの間にか呪いが来ているのではないか、目をつぶったらそこに怪異があるのではないか、そんな怖さがあります。
誰にでも起こり得る、土地にまつわる怪異や人の怨念の強さなど、日本ならではの恐怖演出がふんだんに盛り込まれているので、ホラー耐性が無い人は閲覧注意です。電気が勝手についたら幽霊のせいにするのではなく、電気の不具合を心配するような合理主義ともいえる考え方の主人公が、気づかないうちに非科学的な呪いに感染していく様子を描いているのが印象的でした。
また、フィクションとノンフィクションの境目があいまいなところもこの作品の怖さを倍増しているところです。実在する土地や人物をモデルにした設定があるからこそ、より現実味を帯びて穢れは我々の傍に歩み寄ってきているのです。
並大抵のホラーじゃ怖がらないという、ホラー上級者の方は是非、小説版も併せて楽しんでみて下さいね。
背筋が寒くなるようなジャパニーズホラーを楽しもう!
いかがだったでしょうか。選りすぐりのホラーをご紹介させて頂きました。
ヒトコワ系から見たら呪われてしまう系まで、様々なジャンルのホラーを知って頂けたでしょう。
ホラーと言っても怖いだけではなく、エンターテイメント性もある作品が多いので、あらすじなどを読んで興味の持ったものを是非見てみて下さい。もちろん、心臓の弱い方、ホラーが苦手な方は無理をせず見られるものを選びましょう。
自分の見たい系統の気分に合わせてホラーを堪能してみて下さい。