妖怪好きが勝手に選ぶ、日本の最強妖怪7選!

妖怪好きが勝手に選ぶ、日本の最強妖怪7選!

日本の文献や民話、伝承などで伝えられている妖怪の種類は1000種類を超えるとされています。昨今ではアニメや漫画、映画、ゲームなど様々なコンテンツの題材として扱われる妖怪たちは今も昔も人々を魅了してやみません。元々は神様としてあがめられていたものもおり、その中で最も強い妖怪とは一体なんなのでしょうか。

妖怪好きの筆者がいくつかの要素から強いと思われる妖怪を選出してみました。

強さを評価するにあたって

強さを決めるにあたって、いくつかの定義をしていきます。妖怪とひとくくりにいっても様々な種類があり、「酒吞童子」といった固有名詞から「鬼」という漠然とした種族に分けられます。妖怪研究家・作家の多田克己は日本三大妖怪を「鬼」「河童」「天狗」と定めており、名実ともに上位にある妖怪であることを指します。今回はこの「鬼」などといった種族ではなく、固有名詞的に使用される妖怪名を適用して判断していきます。

判断基準としては「知名度」「人間との関わり方」の2点になります。

それぞれの逸話や伝承を交えてご紹介していきますので楽しみながらお読みください。

日本三大悪妖怪「酒吞童子」

大江山酒天童子絵巻物. 二 – 国立国会図書館デジタルコレクション

文化人類学者・民俗学者の小松和彦が、日本の中世文学の世界で有名な「宇治の宝蔵伝説」を背景とし、日本三大悪妖怪というものを提唱しました。その中に名前があげられているのがこの酒吞童子です。現代でも様々なコンテンツに取り上げられ、その名を聞いたことがある人も多いのではないでしょうか。人を食い、都を荒らし、酒を好む。鬼の頭領として名高い妖怪です。

<登場する文献>

大江山酒天童子絵巻(大江山絵詞)(南北朝~室町初期)

酒伝童子絵巻(室町時代)

御伽草子(江戸時代) など

<伝承>

ここでは最古の伝承である「大江山酒吞童子絵巻」のものをご紹介します。

平安時代、都で若者や姫君の神隠しが相次ぎました。そこで安倍晴明が占ったところ、大江山に住む「酒吞童子」という鬼の仕業だとされました。それを知った帝は源頼光と藤原保昌を征伐に向かわせることにしました。一行は自らを山伏であると偽って酒吞童子の屋敷に忍び込み、そこで鬼たちと人肉や血を食べることで警戒心を解きました。頼光らは酒吞童子たちに八幡大菩薩から与えられた「神変奇特酒」(神便鬼毒酒)という毒酒を飲ませ、酔ったところ、首をはねて殺しました。生首は頼光の兜を噛みつきにかかりましたがやがて力尽きました。その首を持ち帰ろうとしたところ、鬼の首は不浄なので都に入れてはいけないと子安地蔵のお告げがあり、鬼の首が持ち上がらなくなった場所に埋め、神社を建てました。現在も残る「首塚大明神」は首から上にご利益があります。

<現代登場作品>

能「大江山」

歌舞伎「大江山酒吞童子」

宝塚歌劇団「大江山花伝」

映画「妖怪大戦争ガーディアンズ」

ゲーム「妖怪ウォッチ」

ゲーム「陰陽師本格幻想RPG」 など

<出没地・人間とのかかわり方>

現在の京都・大江山

都の姫君を攫う

都の人間を喰う

夜の平安京を荒らしまわる

日本三大悪妖怪「玉藻御前」

今昔画図続百鬼 | 九大コレクション | 九州大学附属図書館

小松和彦が挙げる三大悪妖怪のうちの1つが玉藻御前です。平安時代後期に鳥羽上皇の寵愛を受けたとされる美女であり、その正体は妖狐であるとされています。天女のような美しさと豊富な知識で帝をメロメロにさせました。玉藻御前も非常に人気のある妖怪で、ゲームなどによく登場する姿をみかけます。

<登場する文献>

神明鏡(南北朝時代)

玉藻の草子(室町時代)

今昔画図続百鬼(江戸時代)

<伝承>

玉藻御前はその美貌と博識をもって鳥羽上皇より寵愛を受けていましたが、鳥羽上皇が次第に病に伏せるようになり、その原因はわかりませんでした。しかし陰陽師・安倍泰成が占いで玉藻の前の仕業であると見抜き、その正体である白面金毛九尾の狐の姿となって逃げだしました。すぐさま三浦介義明をはじめとする征伐隊を組み、那須野へと逃れた玉藻御前を討伐しました。玉藻御前の怨霊は「殺生石」となり近づく人間や動物等の命を奪うようになりました。その後、玄翁和尚が殺生石を破壊し、破壊された殺生石は各地へと飛散したといわれています。

<現代登場作品>

能「殺生石」

歌舞伎「玉藻前桂黛」

アニメ「ゲゲゲの鬼太郎」

映画「妖怪ウォッチ」

ゲーム「FGO」

ゲーム「陰陽師本格幻想RPG」 など

<出没地・人間とのかかわり方>

現在の京都、栃木

帝をたぶらかした

人間を無差別に殺した

日本三大悪妖怪「大嶽丸」

東海道五十三対 – 国立国会図書館デジタルコレクション

日本三大悪妖怪の最後にご紹介するのは大嶽丸です。現在の滋賀県と三重県の県境に位置する鈴鹿山に住んでいる鬼神で、鬼神魔王、大だけ丸、大竹丸などの呼び名があります。神通力を使い雷鳴を操るとされています。

<登場する文献>

能・田村(室町時代初期)

鈴鹿の草子(室町時代)

東海道五十三対(江戸時代)

<伝承>

桓武天皇の時代に国鈴鹿山に大嶽丸という鬼神が現れ、鈴鹿峠を往来する民を襲って都への貢物を奪いました。帝は坂上田村丸に大嶽丸の征伐を命じ、田村丸は鈴鹿山へと向かいましたが、大嶽丸は悪知恵を働かせ峰の黒雲に紛れて姿を隠しながら雷電を鳴らし暴風雨を起こし、火の雨を降らせて田村丸の軍を足止めしました。一方で鈴鹿山には鈴鹿御前という天女が住んでおり、大嶽丸は鈴鹿御前に焦がれ、夜な夜なその館へ通っていたが思いが通じることはありませんでした。田村丸が神仏に縋ると、「鈴鹿御前の力を借りよ」と言われ、鈴鹿御前の元へ行くと助力を得られることになりました。鈴鹿御前の助けもあり、三明の剣を大嶽丸から奪い取ると激しい戦いの末、大嶽丸の首を落としました。

その後冥界から蘇った大嶽丸が陸奥国霧山に立て籠って日本を乱し始めましたが、再び田村丸によって城を打ち破られ、その首が落とされました。

<現代登場作品>

能「田村」

能「鈴鹿山」

ゲーム「陰陽師本格幻想RPG」

ゲーム「放置少女」 など

<出没地・人間とのかかわり方>

現在の滋賀県、三重県、岩手県 など各地

都への貢物を奪う

旅人を襲う

神通力を操って困らせる

土蜘蛛

e国宝 土蜘蛛草紙絵巻

戯曲や絵巻物に数多く登場し、日本を魔界とする目的を持ちつつ、源頼光に対抗する存在として描かれることの多い、大きな蜘蛛の妖怪。鬼の顔に虎の胴体、蜘蛛の手足を持つとされており、異形のものとして扱われます。その大きさは所説によって様々ですが1メートル以上あるものが多いとされています。様々な伝説があることから固有名詞ではなく種族とも考えられますが、ここでは固有名詞として扱います。

<登場する文献>

平家物語(鎌倉時代)

土蜘蛛草紙(南北朝時代)

能・土蜘蛛(室町時代)など

<伝承>

伝承は主に2つに分けられます。

・土蜘蛛草紙

源頼光が渡辺綱と共に北山へ行くと空飛ぶ髑髏を見かけました。不思議に思った2人はその髑髏を追跡し、館にたどり着きます。そこから数々の妖怪たちが現れて激しい戦いとなりました。明け方、美女が現れ目くらましを仕掛けてきたので一太刀浴びせるとそこには白い血痕が残っており、それを辿ると洞穴にたどり着きました。そこには大蜘蛛がおり、これがすべての元凶でした。その蜘蛛の首を落とすと腹からは1990個もの死人の首が現れたとされています。

・平家物語

源頼光がマラリアに罹ったとき、枕もとに約2メートルの怪僧が現れました。頼光を縄でからめとろうとしたのですかさず名刀・膝丸でその僧に一太刀浴びせるとすぐに逃げていきました。翌日その血を辿った頼光は北野天満宮の裏手にたどり着き、そこには大蜘蛛をみつけました。頼光たちはこれを捕え、河原に鉄串で全身を突き刺して晒しものにしました。するとみるみるうちに病が回復したと言われています。

<現代登場作品>

能「土蜘蛛」

漫画「ぬらりひょんの孫」

ゲーム「妖怪ウォッチ」

ゲーム「女神転生シリーズ」

ゲーム「サクラ大戦」 など

<出没地・人間とのかかわり方>

現在の京都

人を食べた

源頼光を殺そうとした

歌川国芳: 「木曾街道六十九次之内」「京都」「鵺大尾」 – 東京都立図書館 – 浮世絵検索

鵺とは、元々トラツグミのような“夜に怪しい声で鳴く鳥”の総称とされていましたがいつのまにか妖怪の名称として定着するようになりました。猿の顔、狸の胴体、虎の手足を持ち、尾は蛇という異形で、空を飛び、鳴き声で人々を悩ませる妖怪です。顔や手足の動物は諸説があり、頭が猫で胴は鶏といった場合もあります。

<登場する文献>

平家物語(鎌倉時代)

摂津名所図会(江戸時代)

源平盛衰記(鎌倉時代) など

<伝承>

平安時代末期、帝の住む清涼殿に黒煙が立ち込め、不気味な鳴き声が響き渡り、帝もこれにおびえていました。ついに帝は病気になってしまい、加持祈禱をしても効果はありません。帝の側近たちは源氏の武将・源頼政にその討伐を命じました。頼政は酒呑童子や土蜘蛛を退治した源頼光から受け継いだ弓を携えて、その正体を待ち構えました。そして黒煙がたち、怪しげな影を見つけた頼政は矢を放ち、悲鳴と共に鵺が二条城の北方あたりに落下するのを確認した後、家来の猪早太がとどめを刺しました。これを機に帝の体調は回復し、頼政は獅子王という刀を頂戴したといわれています。

<現代登場作品>

能「鵺」

漫画「モノノ怪」

漫画「ゲゲゲの鬼太郎」

ゲーム「大神」

ゲーム「刀剣乱舞」 など

<出没地・人間とのかかわり方>

現在の京都

帝を恐怖させ、病にさせた

人々を怯えさせた

海坊主

東海道五十三対 – 国立国会図書館デジタルコレクション

海に住む妖怪で、「海法師」「海入道」などという名称もあります。夜間に登場し、海面から現れて船を破壊する妖怪として知られています。真っ黒な坊主頭の巨人とされており、「やあやあ」と声を上げて泳いだり、櫓で殴ると「あいたた」と声を上げることもあるとされています。弱点は煙なので、煙草などを常備しておけば追い払うことが出来るといわれています。

<登場する文献>

閑窓自語(江戸時代)

奇異雑談集(江戸時代)

本朝語園(江戸時代) など

<伝承>

日本各地で目撃されており、民話や伝説に近い形で伝えられています。

東北地方では漁でとれた魚はまず海の神に献上しなくてはならず、それを破ると海坊主が現れて船を壊し、船主を攫って行くとされています。

備讃灘では大きな玉のようなものが浮いており、船を寄せてそれを捕えようとすると沈み、少し離れると浮かび、人をからかうともされています。

また、海坊主は姿を変えることもできるといわれており、宮城県では美女に化けて泳ぎに誘い、そのまま海に入ると殺されてしまうというものもあります。

<現代登場作品>

アニメ「ゲゲゲの鬼太郎」

アニメ「妖怪ウォッチ」

映画「妖怪大戦争」

<出没地・人間とのかかわり方>

東北地方

日本各地

船を破壊する

人を溺れさせる

八岐大蛇

『日本略史 素戔嗚尊』 月岡芳年 | ネット美術館「アートまとめん」

8つの頭と8本の尾を持ち、目はホオズキのように真っ赤で、背中には苔や木が生え、腹は血でただれており、8つの谷や8つの峰にまたがるほど巨大といわれている大蛇。高志から出雲へやってきて、その土地の若い娘を毎年生贄としてとっていました。お酒が好きで、人間たちを恐怖に陥れていました。

<登場する文献>

古事記(奈良時代)

日本書紀(奈良時代)

<伝承>

八岐大蛇の伝説は歴史が深く、神話の時代にまでさかのぼります。

素戔嗚尊が出雲(現在の島根県)の方へ出かけると、老夫婦と若い娘が泣いていました。その訳を聞くと毎年村では生贄を出しており、今年がその娘の順番だといいます。生贄は高志(現在の富山県~新潟県)からやってくる8つの頭と8本の尾を持つ恐ろしい大蛇に食べられてしまいます。素戔嗚尊はその娘との結婚を条件に大蛇退治を請け負います。酒に弱いことを見抜いた素戔嗚尊は八塩折の酒を使い、大蛇を眠らせた後その8つの首全てを切り落として退治しました。

<現代登場作品>

アニメゲゲゲの鬼太郎」

ゲーム「大神」

ゲーム「女神転生」

ゲーム「ドラゴンクエストⅢ」

<出没地・人間とのかかわり方>

現在の島根県、富山~新潟県

若い娘を生贄として食べた

己の中の最強を決めよう!

独断と偏見で最強妖怪たちを選出してきました。個人的な最強妖怪は「酒吞童子」です。何故ならしっかりとした伝承が残っており明確な像が描かれているため、より具体的な人間への被害が見えるからです。残酷な描写は省きましたが、絵巻には酒吞童子の残忍な姿が描かれています。死後も神社を建てられているのでその強さは伺えるでしょう。

怖さや強さの尺度は人それぞれになりますので、皆さんの中で是非「最強妖怪」を決めてみて下さい。また、ご紹介した逸話や伝承については諸説あるものもございますので、もっと詳しく知りたいという方はご自身で調べてみて下さいね。妖怪の面白さ、楽しさを知ってもらえたなら何よりです!