オカルトライター厳選!2021年おすすめのホラー小説10選

オカルトライター厳選!2021年おすすめのホラー小説10選

昨今では色々なホラー作品が公開され、プチホラーブームが巻き起こっています。映画、ドラマ、漫画、ラジオ…そんな色々あるホラー作品の中で今回はおすすめのホラー小説をご紹介していきたいと思います。

ホラー小説の醍醐味は、「自分の想像力でいくらでも怖くなる」という点にあります。「女の幽霊」と書かれていたらそれぞれ異なる怖い「女の幽霊」の形が脳内に過るでしょう。小説に沿って、自分の思い描く姿かたちでホラー小説は進行していきます。想像次第でいくらでも怖くなるのがホラー小説の良いところでもあり、恐ろしいところです。

今回は特に想像力を掻き立てられるおすすめのホラー小説を10作品ご紹介していきます。

【1】残穢 小野不由美

ここがおすすめ
  • 自分にも起こりうる恐怖
  • 謎を追い求めていく
  • 主人公の冷静さ

穢れとは、忌まわしく思われる不浄な状態。その穢れに触れてしまうとどうなるのか…伝播する穢れとその根源を追い求めていくという小説になっています。読了後にもその穢れが残るような恐ろしさがあるため、読んだ人は皆、口をそろえて「家に置きたくない小説」と言います。そのくらい尾を引く小説です。マンションで起こる怪奇現象の謎を追い、その土地起こった凄惨な出来事は穢れとなり、新たな災いをもたらしていきます。作者かつ主人公と思しき語り手の冷静な判断と分析によって物語は進んで行きます。ドキュメンタリーのような形式をとっているため、非情にリアリティがあります。実在する人物の名前も出てくるのでフィクションなのかノンフィクションなのかわからないほど説得力のある構成となっています。下手に幽霊が出てこないおかげで、穢れそのものの恐ろしさが読者にも伝わり、絶望的な気持ちにさせられます。

アッと驚く怖さというよりも、後からゆっくりと蝕んでいくような恐さが特徴的です。読み応えのある内容ですので、没入感が得られるのもこの作品の怖さでもあります。

ホラー上級者に是非読んで欲しい1冊です。

【2】悪の教典 貴志祐介

ここがおすすめ
  • サイコパスをわかりやすく描いている
  • 文章の読みやすさ
  • 下巻のスピード感

映画にもなった「悪の教典」。サイコパスについて描いた作品の中では至高です。高校教師を務める主人公、「ハスミン」は生徒や保護者に好かれる人気者ですが、その彼の正体は生まれながらにして共感能力を持たないサイコパスでした…というところから始まる作品。とにかく主人公の「ハスミン」が怖い!人の怖さを描いたサイコホラー作品となっています。文章も構成も面白いのでぐんぐん読めますが、本を持つ指先が少し冷たくなるような作品です。上下巻で完結する作品となっており、上巻は「ハスミン」の考え方やそれを取り巻く環境についてクローズアップされている印象です。映画よりもずっと登場人物の描き方が丁寧なので、感情移入がしやすくなっています。

少し長めの小説ですが、それを感じさせないほど文章に引き込まれていきます。

主人公の考え方が理解できないという人がとても多いとは思いますが、そんな人が実際にもいるのかもしれないという底知れない怖さを感じることが出来ます。

ヒトコワ的な小説を求めている人におすすめしたい1冊です。

【3】夜市 恒川光太郎

ここがおすすめ
  • 懐かしさのあるホラー
  • 異世界の雰囲気
  • 読後感

第12回日本ホラー小説大賞受賞作であり、直木賞の候補にもなった「夜市」と書き下ろしの「風の古道」が収録された1冊。「夜市」はゾッとするような幽霊の演出はないものの、主人公が不思議な世界に迷い込み、非日常的な体験をしていきます。尾を引く恐怖があるというよりもどこか懐かしさとノスタルジーのあるホラー小説です。夏の匂いと夜市のざわざわとした喧騒の寂しさがほんのりと香る和風作品となっています。

主人公が迷い込んだ異世界の描写が素晴らしく、本当にこういう世界があるのではないかとさえ思うほどです。日常の中に異界は存在する、そんな気さえもしてきます。

絵に描いたようなホラー作品ではありませんが、異世界の不思議さや底知れぬじわりとした恐怖が滲む作品となっています。異世界とはどんな場所なのか、想像しながら読むと世界観に没入でき、作品の深みが増します。

ファンタジー色が強く、怖い要素はそこまで多くないのでホラーが苦手な人でも読むことが出来るでしょう。また、中編小説なので、そこまで文章を読むのが得意ではない人でも無理なく読めるはずです。

夏のノスタルジックなホラーを求める人は是非「夜市」を手に取ってみて下さい。

【4】新興宗教オモイデ教 大槻ケンヂ

ここがおすすめ
  • オカルトコメディー!?不思議なテイスト
  • 主人公の感情
  • 青春小説のような爽快感

精神を病んで学校から消えたなつみさんは、1か月後に新興宗教オモイデ教の信者となって主人公の元に現れます。その宗教団体は人の精神を狂わせる誘流メグマ祈呪術を使って恐ろしい行為を繰り返していました…大槻ケンヂ氏が贈る、オカルトホラー青春小説ともいえるこの作品は、奇妙な後味とSFの風味がなんともいえない調和を見せます。薄暗い感情を抱き、学校や社会に不満を抱いている主人公は新興宗教に出会ってどうなってしまうのか。そんなはらはらした気持ちにさせられます。しかし、ドロドロとした感情表現が多い中、文章自体はさっぱりとしていて読後も悪くはないでしょう。

少しグロテスクな要素も含まれているのでグロが苦手な人は要注意です。

大槻ケンヂ氏の作品と言えば「グミ・チョコレート・パイン」が有名です。そこに出てくるキャラクターもこの「新興宗教オモイデ教」にも出演しているので見どころです。

どこか疾走感のある作品全体の雰囲気は青春小説ともいえるでしょう。しかし、オカルトホラー要素も満載なので、どちらも楽しみたいという人におすすめです。

【5】変な家 雨穴

ここがおすすめ
  • 読みやすい構成
  • ミステリー要素
  • わかりやすい図面付き

2020年、「オモコロ」ウェブサイトで166万PVを記録した記事を大幅に加筆して単行本化した作品です。「雨穴」と検索してもらえれば分かる通り、この作者である雨穴さんは主にウェブサイトで記事を執筆しているWEBライター&クリエイターです。YouTubeにも動画を投稿しており、不気味さとグロテスクさ、気持ちの悪さを表現した作品が多くなっています。そんな雨穴さんの初の書籍ということで、ホラークリエイターらしい1冊となっています。

知人が購入を検討している中古の一軒家には不思議な空間がありました。その他にも不可解な間取りがいくつか存在し、妙な違和感があります。その間取りの謎を辿っていく…というお話になっています。フィクションなのかノンフィクションなのかわからないほどリアリティのある話の進め方は読みごたえ抜群です。どちらかというとミステリーの要素が強めになっていますが、ホラーとしてもかなり面白いでしょう。

比較的ライトなミステリーホラー作品なので、ホラー初心者の方や怖すぎないものを読みたいという人におすすめです。

【6】一行怪談 吉田悠軌

ここがおすすめ
  • 短くても怖い
  • 想像力が掻き立てられる
  • 隙間時間に読める

1ページに1つだけ書かれる怪談。想像力を喚起し、ジワリと怖くなる1冊です。一行怪談には決まりがあり、題名は入らない、文章に句点は一つ、詩ではなく物語である、物語の中でも怪談に近い、以上を踏まえた一続きの文章を「一行怪談」として収録しています。

200作品にも上る怪談を収録し、1冊の本となっています。

一行怪談の新しいところは、題名もなく、要素だけを与えて前後の物語は読者に全て委ねるという点です。読者それぞれが「この話はこういう人物が語り手だろう」「この人はどうなったんだろう」と想像し、物語をひろげていくことができるという斬新なスタイルをとっています。作品一つ一つをじっくり読むと、物語の想像がしやすいでしょう。悲鳴を上げるような恐さではなく、意味が分かると怖い話のようなゾッとする怖さがあります。

夢うつつのような作品から実話怪談に近いような作品まで様々にあるのも面白いところです。ふと思い出したときに手を伸ばして読むのも良いかもしれません。

かなり短い作品が連なっているので、文章が苦手な人でも楽しめるでしょう。

【7】文豪たちが書いた怖い名作短編集

ここがおすすめ
  • 有名文豪の作品を網羅
  • 読み比べも出来る
  • 緻密な描写

彩図社文芸部が編纂した文豪たちの名作短編集。この「文豪たちが書いた」シリーズは非情にクオリティが高く、セレクトも素晴らしいものが多いです。志賀直哉「剃刀」、夏目漱石「夢十夜」、江戸川乱歩「押絵と旅する男」、小泉八雲「屍に乗る人」など、11人の文豪が綴った怪談、奇談、幽霊譚がひとまとまりになっています。この一冊を持っていれば文豪の有名ホラー作品は楽しめるのではないでしょうか。

文豪が生きた時代特有の空気感、言葉選び、全てにおいて精鋭の文豪たちが名を連ねています。文学作品を生み出し、後世に残している文豪たちから生み出された怪談はこの上ない恐怖を我々に与えてくれるでしょう。作者によって異なる文体が読み比べにも最適です。約100年前の人々も同じものを読んで怖がっていたのかと思うとなんだか感慨深いものがあります。文豪作品を読んでみたいけれど、どれを読んだらいいかわからない、という人にもおすすめしたい1冊となっています。

時空を超えた珠玉のホラー作品を味わいたい人は手に取ってみて下さいね。

【8】ふらんす怪談 アンリ・トロワイヤ

ここがおすすめ
  • 海外の怪談を読める
  • 心霊だけではない怖さ
  • 何処か不思議な軽快さ

アンリ・トロワイヤは「ドストエフスキー伝」などを手掛けたフランスの小説家、伝記作家、随筆家です。「ふらんす怪談」は澁澤龍彦氏の訳により、よりレトロかつ幻想小説の雰囲気を残しています。この作品は短編集(全7集)となっているため、読みやすい作品集です。日本の怪談とはまた一味違ったフランスの民話に基づいた話や、SFチックなもの、科学の発展から創造される不思議な話がまとめられています。怪談と銘打ってはいますが、奇談に近い話が多くなっている印象です。

色々な恐怖の根源を色濃く描いており、それに澁澤氏の訳も相まって御伽噺を読んでいるような感覚になります。海外の文学となると表現が難しい印象ですが、「ふらんす怪談」ではそういう事もなく、わかりやすく纏まっています。軽快で明快な不思議小説、という表現が最も近いかもしれません。

日本のホラーだけではなく海外のホラーも読んでみたい!という人におすすめしたい1冊です。

【9】怪のはなし 加門七海

ここがおすすめ
  • 実話怪談
  • リアリティのある語り口
  • ユーモラスな話もある

物心ついた時から「この世のものではない何か」と遭遇していた著者が描く実話怪談の世界。都会の片隅で、寂れた神社で、闇夜の密室で、夜の町で起こる怪異の数々をまとめています。ゾッとする恐ろしいお話から心温まるお話まで取り揃えており、色々な怪談を楽しめます。小さなときに見た何か、大人になってから視界を過った何か、そんな日常に潜む恐怖を思い出させてくれる1冊となっています。

いずれも読みやすい文体で書かれており、時にはコメディのような雰囲気のものすらあります。著者の「怪異慣れ」を感じる場面も節々にあり、怪異の捉え方は人それぞれなのだなあという気持ちにさせられます。

著者のあっけらかんとした態度に驚きつつも、きちんと怖い部分があるので読みごたえも抜群です。「実話怪談」ということで、自分もそういうモノを見てみたいなと好奇心をくすぐられる1冊です。怪異が在る前提で読み進めるとより一層楽しめるでしょう。

都市伝説や怖い話が好きな人におすすめしたい作品です。

【10】幽談 京極夏彦

ここがおすすめ
  • 読ませる文章
  • 想像しやすい描写
  • 日常と非日常の境界が曖昧になる点

「姑獲鳥の夏」「魍魎の匣」で知られる京極夏彦氏の短編ホラー小説。不気味で不思議、何処か不条理すら感じるお話の数々に読者は引き込まれていきます。夢か現か、目の前にあるものがふと消えてしまうのではないかとすら思うほどの恐怖が襲ってきます。

京極氏の巧妙な文章構成は読者の日常と小説の中の非日常の境界線を曖昧にする力があります。どちらが現実なのか、夢で見たことなのか、小説で読んだことなのかわからないほど不気味に、読者の心の中に入って来ます。

手首を拾う、ともだち、下の人、成人、逃げよう、十万年、知らないこと、こわいもの、「幽談」にふさわしい奇妙な話が七編収録。文豪のような少し難しい言葉を使いますが、それがこの作品の味わいを深めています。全体的に掴みどころがあまりなく、ぼんやりと恐ろしいのが特徴的です。京極夏彦作品を読んでみたいけれど、他の長編はページ数が多すぎてきつい…と足踏みしている人におすすめしたい1冊となっています。

ただの怖い話というだけではなく、我々の日常にも滑り込んでくる作品です。

映像が無いから尚更怖い!?ホラー小説でゾッとしよう!

おすすめのホラー小説を聞いたことのある作品からなかなかマイナーな作品まで10選、ご紹介いたしました。気になるものがあれば是非手に取ってみて下さいね。

ホラー映画などの映像作品では満足できない!という人には是非小説を手に取ってもらいたいです。自分の脳が構築する「恐怖」の姿を味わうことが出来ますよ。