オカルト好きが勝手に選ぶ、日本の代表的な女妖怪7選

オカルト好きが勝手に選ぶ、日本の代表的な女妖怪7選

妖怪といえば人に悪さをしたり、人に何か悪いことを齎したりするイメージがありますよね。人への怨みで妖怪になったものが多い為、そのような立ち位置のものが多くなっています。今回ご紹介する女妖怪たちは哀しい過去を持ち、妖怪になったものたちになります。美しい女妖怪たちの世界に浸ってみて下さい!

美しさの裏には恐ろしさも隠れている…

妖しく男たちを虜にした女妖怪たち。中には恋焦がれ妖怪になったり、愛しい恋人に裏切られて妖怪になったものもいます。悲恋の物語や妖怪になった成り立ちも交えてご紹介していきます。是非美しい妖怪たちに翻弄されてみて下さいね。

清姫

新形三十六怪撰 – Wikipedia

和歌山県にある紀州道成寺にまつわる伝説に登場する姫。安珍という僧侶を愛してしまったが故にその半身は蛇となり、口から火を噴くようになってしまいました。愛憎から妖怪になった女性です。

<伝説>

安珍という一人のお坊さんが熊野に参拝に出かけた時のことでした。とある宿に泊まった安珍の姿を見た清姫は一目惚れをし、結婚を迫りました。安珍は参拝の途中だからそれは困る、参拝が終わったらまた会いに来るのでその時には君の言うとおりにしよう、と誤魔化して出かけてしまいます。その後安珍が戻ることはなく、それに気づいた清姫は安珍を追いかけ、やっとのことで追いつきますが、安珍は別人だと誤魔化し、しまいには熊野権現に助けを求め清姫を金縛りにした隙に逃げ出そうとしました。その態度に怒りが頂点に達した清姫は遂に蛇身に化け安珍を追跡しました。道成寺に逃げ込んだ安珍を蛇身で火を噴きながら追いかける清姫。梵鐘を下ろしてもらい、その中に安珍は逃げ込みますが、その周りに巻き付いて清姫は火を噴きました。安珍は梵鐘の中で焼け死に、その後で清姫も入水しました。

<文献>

大日本国法華験記(平安時代中期)

今昔物語集(平安時代末期)

飛縁魔

飛縁魔 – Wikipedia

菩薩のように美しく、しかし夜叉のように恐ろしいと言われる飛縁魔。その美しさに魅入ってしまった男は落ちぶれ、家を失い、最後には命まで失うといわれています。

<伝説>

飛縁魔は仏教の言葉であり、女犯を戒めた言葉とされています。男が女に惑わされ、家を失うことの愚かさを例えたものです。顔と心が全く違い、男を滅ぼすものとして描かれることが多く、その美しさに惑わされてはいけません。中国で夏の桀王を惑わせ、贅沢をしたという妺喜、殷の紂王を堕落させたという妲己、周の幽王の妃でありながら周を滅ぼすきっかけとなった褒姒といった王の妃たちをこの飛縁魔になぞらえます。丙午生まれの女性は男を食いつぶして早死にさせる、という言い伝えから創作された妖怪といわれています。

<文献>

絵本百物語(江戸時代後期)

絡新婦

絡新婦 – Wikipedia

美しい女性の姿に化ける蜘蛛の妖怪。伊豆や仙台に伝説が残り、その姿は各地で目撃されています。多くの男が彼女の姿に魅入り、滝つぼに身を投げたといわれている魔性の女妖怪です。

<伝説>

静岡県伊豆市の浄蓮の滝にある絡新婦伝説では、滝の主とされています。ある男が滝つぼの傍で休んでいると、足に無数の糸が巻き付いてきました。男がその糸を木に巻きつけると、糸に引っ張られるようにして木が滝壺の中に落ちていきました。絡新婦が男を引き込もうとしていたのです。以来村の人々は滝壺に近づかないようにしました。

ある時、とある木こりが滝壺のそばで美しい女性に会いました。その女性に恋をしてしまった木こりは毎日滝へ通うが日に日に衰弱していきました。それを怪しんだ近隣の寺の住職が「絡新婦にとりつかれたのではないか」と考え、滝で読経すると滝から男へ糸が伸びました。それを取り払い、絡新婦の仕業だとわかりますが木こりはそれでも絡新婦を愛しました。山の天狗に結婚の許しを貰おうとしますが、天狗はそれを許さず、悲嘆した木こりは滝壺に身を投げてしまいました。彼は滝から伸びた蜘蛛の糸に絡め取られ、消えていきました。

<文献>

太平百物語(江戸時代)

画図百鬼夜行(江戸時代)

ぬれ女

濡女 – Wikipedia

九州の妖怪・磯女に近いものとされ、多くは人間を食うとされている妖怪です。人の首の付いた蛇とも下半身が蛇になった女とされており、体長は3mに及ぶこともあります。

<伝説>

越後と会津の間にある川岸に若者たちが木材を得るために何隻かの船で向かったところ、1隻が流されてしまいました。流された船の若者たちが川で髪の毛を洗っている女を見かけ不思議に思っていましたが、やがて悲鳴を上げて舟をこぎ出しました。合流した仲間たちが何があったのか、蛇でも出たのかと聞くと、「もっと恐ろしいぬれ女だ」と答えたといいます。それに興味を持った別の舟の男たちがぬれ女を見に行くと悲鳴が聞こえ、ついにはその男たちは帰ってきませんでした。

<文献>

百怪図巻(江戸時代)

画図百鬼夜行(江戸時代)

毛倡妓

毛倡妓 – Wikipedia

長い髪を持ち、その顔は見えず、遊女の姿をした妖怪。遊郭に現れるとされています。顔を隠しているのではなく、顔がないので毛で隠しているとも言われています。

<伝説>

昔、ある男が遊郭に通っていました。そこで髪を乱しぼうっと立っている女の後姿を見かけ、昔馴染みだと思って声をかけました。そこで振り返ったのは顔のない、毛むくじゃらの女でした。驚いた男はその場で気絶してしまいました。遊女の怨念から生まれた妖怪だとされています。

また、歌川豊国による「大昔化物双紙」では男妖怪たちが毛倡妓をめぐって争ったり、毛倡妓が、恋仲となった妖怪のために心中立をするなどの場面が見られ、妖怪たちからの人気はあるようです。

<文献>

大昔化物双紙(江戸時代)

画図百鬼夜行(江戸時代)

鈴鹿御前

東海道五十三対 – 国立国会図書館デジタルコレクション

鈴鹿山に住む、美しい天女。天女とも妖怪とも言われていますがその実体は不明です。鈴鹿姫、鈴鹿大明神、鈴鹿権現、鈴鹿神女とも呼ばれています。

<伝説>

伊勢国鈴鹿山に大嶽丸という妖怪が現れ、田村丸俊宗将軍に帝から討伐の命令が出ました。大嶽丸の神通力に田村丸が苦戦していると鈴鹿御前が味方に付きます。美しい鈴鹿御前に言い寄る大嶽丸から武器を奪い、大嶽丸を討ち果たしました。田村丸と鈴鹿御前は結婚し、娘を授かりました。

夫婦で仲良く暮らしていると、またもや田村丸に討伐の命令が下ります。高丸という妖怪を倒すために鈴鹿御前から火界の印を授かり、出陣。高丸を追い詰めるも岩屋に閉じこもってしまいます。その高丸をおびき寄せるために鈴鹿御前は天の舞を行い、無事討伐が成功しました。

<文献>

太平記(室町時代)

鈴鹿の草子(室町時代)

玉藻御前

今昔画図続百鬼 | 九大コレクション | 九州大学附属図書館

平安時代末期に鳥羽上皇に寵愛を受けたとされる絶世の美女。しかしその正体は九尾の狐とされており、大妖怪です。

<伝説>

玉藻御前はその美しさと賢さをもって鳥羽上皇の寵愛を受けるが、帝の体調が日に日に悪くなっていきました。陰陽師によってその原因が玉藻御前だとされ、白面金毛九尾の狐の姿となって逃亡し、行方をくらませました。その後、栃木県で発見され武士達によって討伐され、その姿を石に変えて人々を恐怖に陥れました。

殷の最後の王である紂の后、妲己も玉藻御前と同一だとされており、その経歴は中国古代王朝殷まで遡ります。

<文献>

玉藻の草子(室町時代)

神明鏡(平安時代)

美しく妖しい女妖怪の魅力にとり憑かれてみては?

女妖怪たちを7選、ご紹介致しました。美しさは罪とはよく言ったもので、その美しさゆえに恋焦がれ、裏切られ、妖怪になったものたちが多いですね。美しい女性には恋が憑き物なのかもしれません。他にも雪女や雨女、お岩さんなどたくさんの女妖怪がいますので気になる方は是非調べてみて下さいね。